僕は小学生の低学年の頃から朝起きるのが早く、６時にNHKがSMPTEカラーバーのテストパターンからパラボラアンテナのオープニングに変わる瞬間が好きだった。
６時のニュースから始まり、６時半には『明るい農村』が放送されていた。
　そんな６時台の早朝から放映されていたアニメがあった。

　それは星の王子様。

とても素朴でほのぼのとしたアニメ作品。
子供ながらに意味はあんまり分からないけど、オープニングのナレーションがとても好きだった。

この物語りを
世界中の子供達に
また自分が子供だった頃を
忘れがちな大人達に
そして
うわべだけでなく
物事の ほんとうの美しさを
見つめる勇気を持った
すべての人々に
心からの友情をこめて
　贈ります。
　　　　　サン・テクジュペリ

昔はなんとなく、夢があって素敵なアニメやほのぼのとした日常や人と人のふれあいを描いたようなアニメが多かった。

　最近はどうだろう？今まであんまり意識した事なかったけど、ワリとドメスティックな内容の作品がおおくなったような気がする。

ドラゴンボールやワンピースなど、仲間を大切にする事や信念を貫く事の大切さはテーマとしてある事は確かだけど、生と死について軽さがあったり、生きる手段として暴力に肯定的だったりと僕が小さい頃のそれとは何か違う気がする。

たしかにゴレンジャーや仮面ライダーはあったけど、その時代のヒーロー物は何処か水戸黄門と同じで、悪しきは滅びる的な『オチ』が必ずあって、単純で痛快だった。
なので悪者は徹底的に悪で、そこに人情の要素はなかった。

今のアニメには悪役と言えど、同じ世界に住む一人の人物で善と悪と言ったはっきりした線で区切れない立ち位置の者同士がやり合う事が多い。

体に穴があいても死ななかったり、一度死んでも生き返ったりと、話としては面白いかも知れないが、今の子供は友達と殴り合いをしたりする経験もなく、そんな漫画を真に受け、加減が分からないまま人を傷つけ、誤って殺めてしまったりするケースもあると聞く。

ドメスティックな部分をデフォルメするなら、トムとジェリーのように徹底的にデフォルメしたらいいのにって思う。

今日、息子達が映画を見たいというので『何を見る？』と訪ねたら『ドラえもん』と言う返事が帰って来た。
我が息子達は、中３と高１だけど、まだまだオボコイようだ。
ドメスティックな内容も然程感じない、夢のある漫画だ。

でも少し前の少年犯罪で『ドラえもんが何とかしてくれると思った』と言う供述があったらしい・・・

ひょっとしてアニメの内容のせいでは無いのかも知れない。

昔は外に出て、リアルに人と人の友達付き合いをしながら育ったけど、今の子は人と人の付き合いは希薄で、テレビやゲームの時間が多く、リアルよりバーチャルの世界に身を置く時間が長い。

その為か、空想と現実の区別がつきにくいのかも知れない。

殴られた事もない子供が、そのまま大きくなり、誰かを傷つける事になると、何十回も殴っても死なないとおもったり、殺めてしまっても生き返ると思ったり、タイムマシーンで人生をやり直したり出来ると心の何処かで思っているとしたら怖い。

心身ともに『傷み』を知らないと、人が感じる『傷み』を理解する事は出来ないと思う。

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